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ジム・クレイマー氏に学ぶ:株式投資の基本(4)~テクニカル分析 (CNBC「Mad Money w/Jim Cramer」より)

引き続き、CNBCの人気番組「Mad Money w/Jim Cramer」のエピソード内、保存版エピソードの一つを紹介します。今回は「テクニカル分析」について放送された時のものです。何度か再放送されていますが、直近で放送されたのは2020年1月17日です。

1. エピソードの概要

CNBCで平日に放送中のクレイマー氏のワンマンショー「Mad Money」では、その日の株価の動きについては触れずに、投資の基本のみに焦点をあてたエピソードを放送する日が年に何度かあります。クレイマー氏の投資理論の基本を振り返る良い機会を与えてくれる保存版ともいえる放送です。

今回もそのような保存版の放送回の一つ、「テクニカル分析」に関する放送の内容をかいつまんで解説します。ファンダメンタル分析重視派向けの内容となってます。テクニカル分析についてがっつり知りたい人には物足りないかもしれません。

直近の放送は2020年1月17日ですが、これ以前にも2017年8月17日、2017年12月27日、2018年7月2日、2018年12月28日、2019年6月26日に放送されるなど、ほぼ半年に一回程度放送されているようです。音声だけでよければ、本エピソードをまるごとPodcastで聴くことができます。また部分的ですがビデオクリップおよび英文のトランスクリプトがCNBCおよびThe Streetのサイトに残っているので、該当ページを以下で適宜紹介しています。

一般的に、ファンダメンタル重視派はテクニカル分析を軽視する傾向が、またテクニカル分析派は該当企業のファンダメンタルに興味を持たない傾向があります。クレーマー氏は、本エピソードの中で、両者は両立できるというという観点から、ファンダメンタル分析重視派向けの人も、持っていると役に立つと思われるテクニカル分析の知識を紹介しています。

尚、本エピソードはクレーマー氏の著書(Jim Cramer’s Get Rich Carefully)の「Chapter 6: Charting for Fundamentalists」の内容を駆け足で紹介している感じでした。本記事でも合計で3つのチャートを同書のChapter 6から拝借しました。

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2. テクニカル分析が役立つ場面

2.1 景気の回復が本物かどうかを確認する

テクニカル分析が役立つ場面としては、まず景気の回復(Rally)が本物かどうかを確認できることにあります。ダウ理論(Dow Theory)の特徴のひとつに「複数の平均的指標が存在する場合、その両者に同じシグナルが見られないなら明らかにトレンドとして捉えることは出来ないと考える」という法則がありますが、この理論にのっとっています。

クレイマー氏は、古典的な例としてはダウジョーンズ工業平均株価(Dow Jones industrial average; DJI)が高値更新をしたのと同じタイミングでダウジョーンズ運輸株平均株価(Dow Jones transportation average; DJT)も高値更新をした場合に、高値更新という動きが理にかなっていると考えてさしつかえないと説明しています。

また別の指標としては、フィナンシャルEFT(XLF)、ハウジングETF(HGX)、半導体ETF(SOX)およびリテールETF(RTH)のすべてが同調して上昇したときに、市場が上昇気流にのったと判断しているそうです。

2.1に関するビデオクリップ&トランスクリプトはこちらからこちら → Mad Money: Cramer teaches investors how to use charts to detect a phony rally on Wall Street

2.2 株式を買うべきタイミング、売るタイミングを見つける

チャート分析は、株式を買うタイミング(株価の底値に達した時点)および株式を売るタイミング(株価の天井に達した時点)を見つけるのに役立ちます。これは特定の銘柄を買うかどうか決めるためのホームワーク(ファンダメンタル分析)を終えて、さあ買おうまたは売ろうと決めたことが前提となります。そして売買を実行するにあたって一番良いタイミングを探すのに役立つということになります。

これに関してクレーマー氏は、2009年に、下落を続けていたAT&T(T)の株価が上昇トレンドに転じたのを見つけたときのエピソードを紹介しています。

© CNBC “Mad Money” (2017年8月17日放送)

この時は4人のチャート分析者と協議をして、2008年の$21がクライマックス・ローでサポートライン(下値支持線)を形成していたこと、200日の移動平均株価が天井(上値抵抗線)を形成していたこと、そして株価が200日の移動平均株価を超えた(200日の移動平均が上値抵抗線から下値支持線に転じた)ときが、上昇サインで、買いシグナルだったという結論に達したことを説明しています。ファンダメンタルだけをみているとまだその時点で買うのはためらいますが、チャート分析の結果を信用して成功した例です。

2.2に関するビデオクリップ&トランスクリプトはこちらからこちら → Mad Money: Cramer’s guide to finding bulletproof stocks using charts

2.3 株式の買われ過ぎ・売られ過ぎを見つける

テクニカル分析により株式が買われ過ぎまたは売られ過ぎを判断することができます。よく使われる指標としては、相対力指数(RSI: Relative Strength Index)があります。

株式が買われすぎたと判断された場合には(株価の)後退の機が熟している(ripe for a pull back)と、売られすぎたと判断された場合には(株価の)跳ね返りの準備ができている(ready for bounce)といえます。

株式が買われ過ぎている状態のときはブル市場で株価が高くなっていますが、しばらく待つと売られて株価が下がってくることが期待されます。売られ過ぎている状態のときはベア市場で株価が低くなっていますが、やがて買い戻されて株価が上がってくることが期待されます。

また、こちらはあまり頻繁に起こるわけではありませんが、株式が買われ過ぎているにもかかわらず株価の上昇気流がいつまでも強いことがあります。そのような場面の例として2009年のLas Vegas Sands(LVS)の分析をしたときの話を紹介しています。この時はRSIではありませんが、同様の目的で使われるスキャスティクスという指標を利用しています。

© CNBC “Mad Money” (2017年8月17日放送)

2009年のLas Vegas Sands株は、買われ過ぎの状態が続いていたにもかかわらず株価が下落せず、上値抵抗線(200日平均線)に沿って動いていました。そして上値抵抗線を突き抜けてからは$10が$48にまで一気に上昇したそうです。

2.4 ファンドマネージャーによる株の買い集め・売り抜けを見つける

出来高(取引数量)も株価の方向性を知るのに役立つ指標です。テクニカル分析においては出来高の高い日のデータがより重要な意味を持ちます。

アキュミレーション・ディストリビューション・ライン(Accumulation Distribution Line)と呼ばれる指標を使うと、投資ファンドのマネージャー等の大口投資家が積極的に特定の銘柄を買い集めている、または売り抜けようとしているのを見つけることができます。

これについては、2012年7月のMonsanto (MON)を使って説明しています。

© CNBC “Mad Money” (2017年8月17日放送)

アキュミレーション・ディストリビューション・ラインによると、Monsanto株は株価が下がっている日もあるけれどもそのような日は出来高が低い反面、株価が上がってる日は出来高が高いことを示していました。この結果は、Monsanto株が(大口のトレーダーによって長期保有目的で)買い集められていることを示しているとのことです。

2.3および2.4に関するビデオクリップ & トランスクリプトはこちらから → Mad Money: Cramer shares the unusual signs that mean a stock is ready to explode

3. チャート・パターンを学ぶ

本エピソードの後半は、具体的なパターンの紹介がありました。各パターンの詳しい説明はないので、こんなパターンがあるんだということを学んで興味をもったら、もっと詳しく説明しているサイトや本で知識を深めてください。

3.3~3.5はPodcastで音声が聞けますが、ビデオクリップがないので、クレーマー氏の著書(Jim Cramer’s Get Rich Carefully)の該当部分から、チャートのみ転載しました。

3.1 ヘッド・アンド・ショルダー・パターン(Head and Shoulder Pattern)

2010年のAlcoa (AA)の例を使って、ヘッド・アンド・ショルダー・パターン(Head and shoulder pattern)は下降トレンドを示す最も恐れるべきパターンであることを説明しています。

© CNBC “Mad Money” (2017年8月17日放送)

Cramer’s next lesson in the technicals dealt with the dreaded “head-and-shoulders” pattern, as seen in Alcoa (AA) back in 2010. Cramer said he ignored this reliable sell signal to his peril.

Cramer said both Europe and China had begun to slow, creating an aluminum glut for Alcoa and stunting its otherwise stellar turnaround plans. Had he adhered to his discipline, his losses could have been averted.

(出典:The Street: Using Technical Analysis to Profit: Cramer’s ‘Mad Money’ Recap

3.2 逆ヘッド・アンド・ショルダー・パターン(Reverse Head and Shoulders Pattern)

2013年のPhizer(PFE)の例を使って、逆ヘッド・アンド・ショルダー・パターン(Reverse head and shoulders Pattern)が現れたときは買いサインであることを説明します。

© CNBC “Mad Money” (2017年8月17日放送)

The opposite was true in 2013 when colleague Tim Collins told Cramer to consider Pfizer (PFE) , which had just completed a reverse head-and-shoulders pattern, among the most bullish of patterns that technicians seek.

Sure enough, shares of Pfizer popped over 10% after Collins identified the move. That’s why Cramer said patterns matter, and when investors see a reliable pattern in a chart, they should take heed.

(出典:The Street: Using Technical Analysis to Profit: Cramer’s ‘Mad Money’ Recap

3.1および3.2に関するビデオクリップ&3.1のトランスクリプトはこちらからこちら → Mad Money: Cramer unveils the scariest pattern in the chart book

3.3 取っ手付きカップ・パターン(Cups and Handles Pattern)

Domino Pizza (DPZ)の例を使って、取っ手付きカップ・パターン(Cups and Handles Pattern)が現れたときは、買いサインであることを説明します。

(出典: Figure 9 in “Jim Cramer’s Get Rich Carefully”)

Another lesson in charting involved one of his favorite patterns, the “cup and handle.” He said that when shares of Domino’s Pizza (DPZ) , which he originally recommended at $10 a share, shot up to $30 before drifting lower, he turned to colleague Ed Ponsi for help.

Ponsi did not advise selling Domino’s, as Cramer expected, but suggested buying more. Why? Because the stock had just completed a cup-and-handle pattern and was ready for another leg higher.

Ponsi nailed that recommendation, Cramer recalled, and Domino’s doubled from that recommendation.

(出典:The Street: Using Technical Analysis to Profit: Cramer’s ‘Mad Money’ Recap

3.4 継続パターン(Continuation Pattern)~ペナント(Pennants)

2011年末のMonster Beverage (MNST)の株価の動きが継続パターン(Continuation Pattern)として紹介されました。

(出典: Figure 11 in “Jim Cramer’s Get Rich Carefully”)

3.5 ウェッジ・パターン(Wedges Pattern)

2010年6月のCitigroup(C)株価の動きがウェッジ・パターン(Wedges Pattern)として紹介されました。

(出典: Figure 12 in “Jim Cramer’s Get Rich Carefully”)

エピソード全体の部分的なサマリー(Cramer Remix)はこちら → Cramer Remix: Why technical charts should matter to every investor

4.(補足)各単語・コンセプトを説明しているサイトへのリンク

まだじっくりと読んでいないものも含まれますが、説明が分かりやすそうなのでいずれ読み込もうと思ったものをリストしてみました。日本語のリンク先はFXトレードのも混ざってますがコンセプト自体は同じかなと思うのであえて含めています。

ダウ理論

株式を買うべきタイミング、売るタイミングを見つける

  • Fidelity: Determining entry and exit points with technical analysis (ビデオ)~ Fidelityが一部の顧客に提供しているActive Trader Pro®というソフトウェアの利用法の説明が中心ですが、テクニカル分析の説明も結構詳しいのでFidelityの顧客でなくてもお勧めビデオです(視聴するのにログインは不要です)。

Relative Strength Index (RSI)

Relative Strength Comparison(RSC)~本エピソードではRSCという言葉は使われませんでしたが、RSIと別の指標の比較の話をしていたのでRSCを指しているのかなと思ったので載せておきます。

Stochastics

Accumulation/Distribution Line

Head and shoulder pattern

Cups and Handles Pattern

Continuation Pattern

Wedges Pattern

Fibonacci~具体例はありませんでしたが、この単語も使用されました。

その他(総合)

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