アメリカのIRA(個人退職口座)および401(k)(確定拠出型年金)制度についての基礎知識(2020年版)

今回はIRAと401(k)について取り上げます。ざっくりいうと、どちらも将来に備えて個人で積みたてる年金で、税法上の利益があります。IRAは勤労収入のある人なら誰でも拠出可能、401(k)は勤務先に制度がないと拠出できないというのが最大の違いです。一年間に拠出できる金額も大きく違います。

では、以下でもうちょっと細かく説明します。

1.IRAについて

IRAとは、Individual Retirement Account(個人退職口座)の略です。銀行でも証券会社でも、自分の好きな金融機関に口座を開設して毎年一定額以内の金額を積み立てることができます。自分自身は働いていなくても、配偶者に勤労収入があれば夫婦二人とも各自の口座に積み立てができます。

2020年の場合、上限は50歳未満の人は6,000ドル、50歳以上の人は7,000ドル(6,000ドルプラス、1,000ドルのCatch-up Contribution)を、2020年1月1日からTax Returnの締め切り日にあたる2021年4月15日の期間内に積み立てることができます。

2019年分についても、上限は50歳未満の人は6,000ドル、50歳以上の人は7,000ドルで、締め切り日は2020年7月15日です(注1)。なので、2019年内に積み立てなかった人は今からでも間に合います。

注1: 本来の締め切りは2020年4月15日でしたが、新型コロナウィルス対策として、連邦税のファイリングおよび支払いが3か月間延長されました。(参考:IRS Notice 2020-18 Relief for Taxpayers Affected by Ongoing Coronavirus Disease 2019 Pandemic)。これに伴い、2019年分のIRAの拠出の締め切り日も2020年7月15日まで延長されました。

拠出したお金をどのように運営するかも全く自由です。なので、CD(定期預金)、株式、ETF、ミューチュアルファンド他、なんでもOKです。

(参考:IRS: Retirement Topics – IRA Contribution Limits)

2.401(k)について

401(k)は、正式にはDefined Contribution Plan(確定拠出型プラン)ですが、Internal Revenue Code (内国歳入法)の401(k)条に規定があることからこのように呼ばれています。 2020年の場合上限は50歳未満の人は19,500ドル、50歳以上の人は26,000ドル(19,500ドルプラス、6,500ドルのCatch-up Contribution)です (注2)。雇用主が指定した証券会社しか利用できず、投資オプションも予めセレクトされた中からしか選べません。

注2:「Highly-Compensated Employees」に該当する場合は、上限まで拠出できない(2020年に一旦上限の19,500ドルまたは26,000ドルを拠出できますが、翌年2021年に一部返金されて2021年の給与所得に加えられてしまう)可能性があります。該当する場合は勤務先から連絡がくるので特に知っている必要はないのですが、興味のある方はこちらをご覧ください。→ Issue Snapshot – Identifying Highly Compensated Employees in an Initial or Short Plan Year

尚、ここでの説明は省きますが、類似の制度に403(b)Plan (学校や病院など、非営利団体向け)、457(b)Plan(政府職員向け)などがあります。また、自営業の人はSelf-employed 401(k)(Solo 401(k))という制度を活用することもできます。

(参考:IRS: Retirement Topics – 401(k) and Profit-Sharing Plan Contribution Limits

尚、401(k)で何に投資したらいいか迷っている方は以下の記事を参考にしてみてください。

アメリカでミューチュアル・ファンドに投資する際の情報収集法、決め方について簡単にまとめました。また、401(k)で何に投資したらいいかについてもアドバイスしてみました。

3.Traditional IRA/Roth IRA、Traditional 401(k)/Roth 401(k)

さらに分類すると、IRA、401(k)ともにTraditionalとRothがあります。一般的には、Traditionalの場合は税引き前(Before Tax)のお金が (注3)、Rothの場合は税引き後(After Tax)のお金が積み立てられます。

注3:職場にリタイアメントプランがなく、Traditional IRAのみへの拠出の場合は、収入に関係なく全額がPre-Taxとなります。401(k)を含む職場でのリタイアメントプランとTraditional IRAを併用した場合には、modified AGI額によってはTraditional IRAが After Tax扱いとなって所得税が延期されない場合があります。詳細は以下のサイトをご覧ください。IRS: 2020 IRA Contribution and Deduction Limits Effect of Modified AGI on Deductible Contributions if You Are Covered by a Retirement Plan at Work 

Before taxとして扱われる場合は、拠出年の所得としてはカウントせず(所得から控除されるので、該当年の所得税がその分安くなる)、お金を下ろした年の所得としてカウントします(お金を下した年に、元本、利息、キャピタルゲイン等で増えた分すべてが所得税の対象となります)。つまり、税金の支払いが将来に延期されます。

After taxとして扱われる場合は、IRAや401(k)に拠出した年はお給料をもらった年の収入としてカウントされるので該当年の所得税上の恩恵はありません。お金を引き出した年の税金の取り扱いは、Roth IRAやRoth 401(k)の場合は元本、利息、キャピタルゲイン全てが無税です。After Tax Traditional IRAの場合は、元本については無税ですが、利子やキャピタルゲインとして増えた分が税金の対象になります。

Roth IRAについては所得制限があるので、一定上の所得がある場合にはTraditional IRAしか使えません(注4)。Roth 401(k)の場合は所得制限がありませんが、勤務先の401(k)プランの中にRoth 401(k) が含まれていない場合には使えません。

注4:例えば、2020年の場合 modified AGI がmarried filing jointly $206,000未満/single $139,000未満の場合のみRoth IRAに拠出可。(参考:IRS: Amount of Roth IRA Contributions That You Can Make for 2020

4.IRAと401(k)、どちらに優先的に拠出するか

勤務先に401(k)の制度がある場合には、401(k)とIRAと両方に拠出することが可能です。金銭的に余裕がある場合には、両方に拠出しておくと老後資金の充実という面では安心ですが、無理な場合には、以下の点を考慮しつつ、優先順位を決めるといいと思います。

  • 401(k)に拠出した場合、雇用主からのMatchingがあるか → ある場合は、最低でもMatchingがもらえる分までは401(k)に拠出しましょう。
  • 401(k)に拠出した場合、IRAがPre-Tax扱いになるか → 401(k)または他のRetirement Planに本人または配偶者が加入している場合、年収の金額によってはTraditional IRAが全額または一定の限度でAfter Tax扱いになることがあります。この場合はまず401(k)を優先し、満額をいれてもまだ余力があるようだったらIRAにもAfter Taxで入れるかどうか決めるとよいでしょう。
  • 401(k)の口座維持料等の手数料を雇用主が支払ってくれるのか → 401(k)の残高に応じて、Plan Administration feeなどがかかることがあります。IRAはMaintenance Fee等が無料のところが大半なので、401(k)の口座維持料が自己負担の場合は、当然ながらIRAを優先したほうが良いと思います。

(参考:IRS: IRA Deduction Limits

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